コラム

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Nr.7 独検小史 (7)


2004年からは海外での実施も始まった。デュッセルドルフの日本人学校,フランクフルト・アム・マインの日本文化言語センターの肝煎りで,この二都市で行われている。長期ドイツ滞在予定の日本人のあいだで,要望がつよいのである。一時はウィーンでも行われていた。ただ,時差の関係で日本国内と同時刻に試験を実施するわけにはいかないので,厳密な意味で「資格認定」はできない。それでもドイツ語の力試しのチャンスとして独検は利用されている。

独検は四つの級で始まったが,2008年から級を二つ増やした。従来の2級と3級の難易度の差が大き過ぎるとの声が多く聞かれたので,その差を埋めるために従来の2級を「準1級」と名称変更し,準1級と3級の間に新たな2級を設けた。また,新しくドイツ語を学び始めた人たちになるべく早くテストの機会が得られるように5級を新設した。これは独検始まって以来最初の大きな手直しであり,各級間の試験問題難易度の調整からあらゆる機械処理の新たな設定まで,神経を使う作業がつづいたが,六つの級の態勢への移行は無事に実現した。

さらに組織体系においては,政府の法人制度改革方針に対応すべく,準備に数年の月日をかけた末,2012年4月1日,財団法人から公益財団法人へと無事移行を果たした。この仕事を全うして,光野理事長は退任した。

2014年5月より新理事長となった上智大学教授の新倉真矢子にもさっそく問題が待っていた。独検の秋の試験日は発足以来11月23日と決めていたが,月曜日を祝日とする政府の方針により,学年歴で11月23日を授業日とする大学が増え,また各大学で入学試験の期日を早める傾向が出てきたために,試験場の確保が難しくなってきたのである。それでもなんとかやりくりしてきたが,やはり日取りを変更したほうがよいと判断される状況となった。入念な調査の結果,2015年から11月23日の試験日を12月第一日曜日に移すことを決定した。

試験日程以上に難しい問題が検定料改訂である。できればこれには手をつけたくないところだったが,諸経費の値上がり,とりわけ近年各大学での会場使用料の高騰に対しては,検定料の値上げ以外にはもはや打つ手がなくなってしまった。1級と準1級は2015年から,その他の級は2016年から値上げをさせていただく。同時に少しでも受験者の便利のために,インターネットによる出願のシステムを整えた。

独検はたえず自己点検し,質の向上をめざしている。〔了〕