コラム

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2006/07/03

Nr.6 W杯を見ながら… Vereinにようこそ!

粂川 麻里生 (慶應義塾大学助教授・独検実行委員)


ドイツサッカー文化の中心にして頂点はブンデスリーガ(Bundesliga)ですが,ブンデスリーガは全国にひろがったクラブ制度の頂点をなすものでもあります。地方自治文化が,生活のあらゆる側面に浸透しているドイツでは,スポーツもまた地域に根ざした形で展開されます。

ドイツのほとんどすべての市町村には,公営のスポーツクラブ(Verein)があり,サッカーをはじめ,ハンドボール,バスケットボール,卓球,あるいは各種体操競技やダンスなどを行うことができます(自治体によって,実施可能なスポーツは多少異なるようです)。これらのクラブは,専門的なスポーツ選手だけではなく,老若男女,あらゆる階層の市民が,それぞれのレベルに応じてスポーツを行えるようになっています。

もちろん,少年少女たちもやってきます。学校の部活動が中心となる日本の少年スポーツとは違い,ドイツではあくまでも地域の「クラブ」が中心となります。小学校(Grundschule)や中高一貫校のギムナジウム(Gymnasium),実業学校に通っている児童や生徒たちも,放課後にはスポーツクラブに集まってきて,トレーナーの指導のもと自分の好きなスポーツを行います。一番人気があるのはやはりサッカーです。ですから,ドイツ中のあらゆる町にさまざまな年齢層のサッカーチームが存在することになります。

なかでも「成年男子」のチームは町を代表するサッカーチームとして,熱烈な声援を受けます。ブンデスリーガに参加しているような一流チームはもちろんのこと,地方の地域リーグを戦っているチームだって「いつかはブンデスリーガへ」という夢を抱く住民たちによって強力にバックアップされます。

このクラブチーム制度は,ドイツという国がその成立から今日にいたるまでずっと,小さな国(Land)の集合体として地方色豊かな文化を育ててきたことにも根ざしています。日本のJリーグの制度も,川淵三郎キャプテンが若い日にデュースブルク(Düisburg)市のSportschuleを訪れた際,ドイツのクラブチームについて知ったのが出発点だそうです。日本全国でサッカーがもっと盛んにプレーされるようになればなるほど,津々浦々の市町村もますます元気になっていくかもしれませんね。