2006/05/17
Nr.4 W杯を待ちながら…(2) ドイツ国内サッカーの隆盛
粂川 麻里生 (慶應義塾大学助教授・独検実行委員)
サッカー大国ドイツは,国家代表チームに集まる支援だけでなく,国内で行われる様々なレベルの試合に注がれる熱い関心によって支えられていると言っていいでしょう。ドイツサッカーの国内での最高峰は,全国のトップチームが参加するブンデスリーガ(Bundesliga)です。1970年代にケルンやブレーメンで活躍した奥寺康彦さんに始まり,現在ハンブルガー SV(Hamburger Sport-Verein)のストライカーとして奮闘中の高原直泰選手まで,日本のサッカーファンにも馴染みのあるプロリーグといえましょう。このブンデスリーガは(日本の J リーグと同様)1部と2部にそれぞれ18チームづつが参加し,計36チームが,ドイツサッカー連盟(DFB)から正式に認められたプロサッカーチームということになります。8月中旬に始まり,冬休みをはさんで翌年6月まで続くシーズン中は,毎週土曜日,各地で熱戦が繰り広げられます。
ブンデスリーガはもちろん全国的な関心を集めますが,セミプロやアマチュアチームによって戦われる各種の地域リーグも同時期に行われ,ブンデスリーガに負けない熱気を放っています。クラブチームのリーグ戦はブンデスリーガから地方の小さなリーグまで入れ替え制度でつながっており,その「下剋上」ぶりが,また関心を呼ぶわけです。よその土地の人には全く知られていないようなマイナーリーグの結果について,大衆食堂の片隅で大声で語り合う男性たちの姿も「ドイツの文化」と言えるでしょう。
一方で,近年は一流クラブチームの全ヨーロッパ的な交流も盛んになっています。ブンデスリーガ1部の上位2チームは,翌シーズンの「チャンピオンズ・リーグ Champions League」に(3位チームも,予選を勝てば出られます),4位および5位チームは UEFA(欧州サッカー連盟)カップに出場することができます。チャンピオンズリーグは,ヨーロッパ各国のトップ・クラブチームが覇を競う華やかな大会で,「ワールドカップよりハイレベル」とさえ言われ,年々人気はうなぎ登りです。
リーグ戦のほかには,「ドイツサッカー連盟杯 DFB-Pokal」という全国規模のトーナメント戦も熱い注目を集める大会です。地方の代表チームが,ブンデスリーガの強豪チームに挑戦することがありうるのも,「トーナメント」の魅力です。今年は,昨年に続いて,名門バイエルン・ミュンヘン(Bayern München)がブンデスリーガの優勝と連盟杯制覇の「連続二冠王」となって,話題を集めました。